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「成功する開業」10原則
繁盛クリニックを開業しているMRT出身の医師のみなさんにお集まりいただき、医師が開業に成功するために欠かせない知恵を語り合っていただきました。開業直後の「滑った転んだ、泣いた笑った」の貴重な経験からわき出すノウハウとコツの数々をご覧あれ。
「成功する開業」10原則はこれだ!
- 原則1.医者は接客業。黙って話を聞いていられれば、患者さまは来てくれる
- 原則2.自分に合う診療科と地域(客層)をとことん選べ
- 原則3.集患は口コミがベスト。次がホームページ(中身を工夫せよ)
- 原則4.立地はむずかしい。腕前よりも駅前? 競合も考えよ
- 原則5.薬品卸はタダで開業支援をやってくれる。コンサルは相手にするな
- 原則6.車は買うな。まず運転資金。ベンツは後から買えばいい
- 原則7.看護師には「君臨すれども統治せず」。若い看護師で人件費抑制
- 原則8.開業後のつまずきから学ぶべし。なんでも自分で深く考えよ
- 原則9.生き残りたければ環境変化に対応せよ。小回りが利く開業医に
- 原則10.開業医は安全第一、自分の実力の6割までの治療行為に抑えよ
K先生
K内科クリニック 開業7年目 東京23区内地下鉄駅近く 関西出身 国立大学卒
N先生
N内科クリニック 開業3年目 東京近郊駅徒歩20分の住宅地 首都圏出身 国立大学卒
T先生
T眼科 開業2年目 東京都心一等地のオフィス街 四国出身 私立大学卒
【K内科クリニック カルテ数の推移】
やさしさと誠意でファン患者を獲得せよ
MRT本日は、開業にうまく成功された先生方にお集まりいただき、うまくいく開業のコツについてご経験談をうかがいたいと思います。まず開業するときに何か工夫されましたか?
N先生わたしはこれといって何も工夫しませんでした。開業した当初は、基本的に「待ち」の姿勢ですから、自分でできることってあまりないんですよね。せいぜい愛想よくすることぐらいでしょうか。
でも地元の人たちにすぐにお越しいただけたので、何もしなくてもうまくいくようになりました。開業当初は1日20人が目標でしたが、冬場に40人くらいになって、それから50-70人くらいでずっと維持できています。
K先生わたしは「とにかく開業は厳しい」と聞いていましたから、土日もやりました。ひたすら働きましたよ。「売り上げが300万円/月超えたら、誰かMRTからバイトに来てもらおう」と思っていました。
開業当初、チラシを打ったら、医師会に呼ばれて怒られましたけど。
T先生「月月火水木金金」ですか、すごいですね。
N先生実はわたし、「開業したいな」と思っていたので、K先生のクリニックにバイトに行って勉強させてもらいました。必要な什器とか、人の動きとか、どういう患者さまが来るかといった感覚がよくつかめました。
K先生わたしのクリニックの開業当初の患者数の推移はこんな感じです。最初の日は12人でしたね。おばあちゃんの知り合いとか、知人たちが来てくれたわけですが。
【K内科クリニック 開業後現金売上と人数】
N先生わたしのように実家の近所でやっていると、知り合いは意外と来なくて、実家を中心にして数十メートル以上離れたところから来られますね。やっぱり知り合いは気恥ずかしいということでしょう。
それから住宅地の場合はお年寄りが多くて、あまり他の病院から移ってきてくれません。診療圏は、「クリニックを中心にして大きな道と大きな道で区切られた範囲」という感じです。
K先生わたしのほうはとにかくちょっとずつ増えていったという感じですね。診療圏は大きな道路を超えた地域までだったのですが、それはその先にあまり評判のいいクリニックがなかったということがあると思います。
T先生ウチは120-150人/日くらいです。都心の開業は、成功する人としない人の差が激しいようです。土日は休診日にしています。
N先生わたしのような住宅地でも、他の病院がやっていないような時間帯に診察しても、ろくに言うことを聞いてくれないドキュン患者が来るだけなんですよ。こっちは金八先生じゃないんだから。それよりもふつうの患者さまの中で、自分のファンを増やさないとダメなんですよね。
まあ、普通に誠意をもってやっていれば、だんだんファンは増えてくるんです。どんなに怒っても、「そこがいい」と言ってくれる患者さまはいますからね。
T先生そう、ファンを増やすには、当たり前のことなんだけど、一生懸命診ることです。真心ですよ。
N先生わたしの場合は口コミで自然に患者さまが広がったので、マーケティングについて知恵を絞らずにすみました。
T先生それは最高のパターンですね。
N先生そのためには、まず患者さまにやさしく接することでしょう。というのは、僕は自分では「薮医者ではない」と思っていますが、医者の出来不出来は患者さまにはよくわからないんです。僕らだって他科のことはよくわかりませんし。だから満足度の評価点は、例えば自分のわがままを聞いてくれるとか、薬が欲しい人は薬をいっぱい出してもらえるとか、家族の分まで薬を出してくれるとか……(笑)。
K先生大学病院は90日分出してますからね。「長期間病院に行かない間に心筋梗塞になった事例もあるあるんですよ」と注意してあげてはいるのですが。
それから、なにしろ何でもやることですね。開業するまで僕は子供なんかほとんど診ていませんでした。最初は「麻疹、水疱瘡」というとおっかなびっくりでしたが、すぐ慣れました。
T先生僕も、自分で診られる範囲は一生懸命診ています。
患者対応で大切なのは、「聞くこと」とスピード
N先生「開業医には、きめ細かな患者対応が求められる」などといわれますが、患者一人ひとりの家庭環境を考えて診察するなんて、現実的にはむずかしいですよね。やっぱり「この人には来てほしくないな」とつい思ってしまう患者さまもいますし(笑)。
T先生初めから「なんとか訴えてやろう」と身構えて来てる人もいますよね。
N先生そうそう、それから「他の病院でこんなことを言われた」と、いきなり怒りをぶちまける人とか。そんなことこっちに言われても……。
T先生あと、患者対応で大切なのは、スピードですね。待たせちゃダメです。20分以上待たせたら帰っちゃいますよ。
N先生それと話を「聞くこと」。人間は人の話なんか聞きたくないんです。もっというと患者さまは病院に医者の話を聞きたくて来ているわけではない。反対に自分の話を聞いてほしいんです。これ、基本。
だから患者さまに好かれるには、うまく相づちを打ちながら話をひたすら聞くことです。そうすると「あの先生はとてもいい人だ」と口コミで広がっていくので(笑)、それが一番ファンを増やすことになるんだけど、それをやってると時間がとられてしまいます。
K先生まったくその通り。医者は接客業以外の何ものでもない気がします。しかし患者さまの話をねばり強く聞いてると、時間をとられますから売り上げと相反することになります。
N先生だからクリニックの経営が離陸して患者さまが増えてきたら、上手に患者さまの話を切らなければなりません。反対に時間に余裕のあるときは、初心を忘れず患者さまの話をじっくり聞くようにしています。自分でも聞き上手になったと思いますよ。
K先生わたしもとにかく忍耐して話を聞いています。「どうやって患者さまの話を切るか」はとても重要で、看護師との連係プレーもやっています。
N先生話の切り方は忙しい勤務医時代にほとんどの人が身につけていますが、むずかしいのは話を聞くことでしょう。
患者さまの話さえ黙って聞くことができれば、心配しなくても患者さまは来てくれると思います。しかし人の話を聞くのはほんとにつらいですよ。それでも聞く時間的余裕があるうちはとにかく患者さまの話は聞くべきです。患者さまが増えてきて時間がなくなったら有段者に昇格ですから話の切り方を工夫をすればよいのですが、黒帯を締めるまではひたすら耐えて聞くことです。
T先生話を切るには、治療の話に持っていくといいですよ。どんなに話を聞いて欲しそうでも、「こういう治療をしますよ」と切り返せば患者さまは黙ります。自分でもこの地域の患者さまとは相性がいいと思いますよ。
K先生それで思うのは、医師のタイプによってうまくいく地域とそうでない地域があるということです。ある地域にバイトに行くと、どんなにちゃんと診察してもまったく患者さまが増えなくて暇だったり、別の地域だとやたらうまくいったり。あちこちバイトに行ってみれば、下町がいいのか、山の手の住宅街がよいのか、自分がどのエリアに合ってるか適性を試せますよね。
T先生開業医は、自分に合った診療科と、自分に合った地域を選ばないと、ホントに厳しいと思います。
それでウチの場合は、口コミによる集患には限界があるんです。オフィス街なので、うわさは社内のみでそれ以上まわりへは広がらないのです。極端な話、同じ会社でも階が違うだけでも口コミが広がりません。
そこでウチの集患の最大の武器はホームページになっています。60歳以下の患者さまの9割はホームページを検索して見て来られますからね。アクセス解析をすれば、見ている人の会社名までわかりますし。だから今は、ホームページの中身を工夫することに頭を使っています。
口コミが集患のためにベストなのはまちがいありません。だけどNO.2はホームページでしょう。ほとんどの医師はまだ気がついていませんけどね。つい最近、あるコンサルティング会社の病院経営セミナーに出席したら、話の半分以上ホームページの話に終始していましたよ。
K先生そうですね、看板、電柱広告、イエローページなんかはダメだと思います。
T先生看板を駅などに出しまくっている競合クリニックもありますが、それはやっぱりお年を召した先生が、昔の感覚でやってらっしゃるところですね。
開業時は薬品卸を徹底的に使え
N先生それから患者さまを引きつけるために必要なのは、なんといっても立地です。
K先生やっぱり1階が入りやすいからいいのは当然だと思います。内科の場合、お年寄りが多いので、1階と2階の差は大きいですよ。
T先生セキュリティーの問題があるから1階よりも2階のほうがよいという考え方もあります。
それと 「腕前よりも駅前」という説もあります。今は病院の勝ち組みと負け組みの差が激しくて、結果として駅前でも患者さまが来ないところがあるのですが……。
N先生必ずしも駅前がいいとは限りませんね。家賃が高いし。
K先生競合の問題もありますね。わたしの場合も半径50メートル以内にすでに内科が3つある地域に参入しましたから。また、「ここはライバルがいない」と思っていても、いつ落下傘で降りてくるかわかりませんし。
N先生それから開業の時には、お金があることがわかっているので、いろんな業者が集まって、金をむしり取ろうといろんな提案をしてきます。でもほとんど無意味ですね。彼らは自分たちのことしか考えてませんから。とにかく必要最低限のものしか買わないことです。それでいいんです。
K先生業者のいうことは聞くなと。有線放送も、自分で頼めば安いのに、業者の言い値だとすごく高かったりします。そもそもあんなもの入れなくても問題ないですよ。
T先生コンサルティング会社という名の内装業者は相手しちゃいけません。わたしの場合はローリスクでやりたいと思っていましたから、内装ははじめ金をかけず、後から少しずつ改善していきました。
いま考えてみると、最初にお金をかけておいたほうが得だったかもしれませんが、内装屋の話はまったく聞かなかったし、保健所の認可も自分で通って取りに行きましたからね。自分で深く考える癖がついたので、それはよかったかと思っています。
N先生わたしは開業の申請は薬品卸さんと一緒に行きましたよ。診療圏調査なんかもお金取られないし。コンサルタントより絶対いいですよ。200万円くらい浮くでしょう。
K先生薬品卸さんはタダで開業支援やってくれますからね。資金計画なんかも見てくれるし。
T先生そうそう、不動産を見つけるときだけは、薬品卸さんに不動産業者を紹介してもらったんです。家主や他のテナントとトラブったときは、家主にいうのではなく薬品卸さんに話を持っていくと解決が早かったですよ(笑)。
N先生それで問屋さんと一生の付き合いになるかというとそうでもなくて、裏切っている先生も多いみたいですね。そんなの彼らにしてみれば織り込み済みですから。それに医療機器を売る人と、薬品の営業の人の部署が違いますから関係ないんです。べったり付き合う必要はないということです。
あと開業で気になるのは資金のことですが、皆さんはどうでしたか? わたしは国民金融公庫と、医師会とつながりのある信用組合で借りられましたが。
K先生医師会は東京は貸してくれませんよ。それと大切なのが運転資金です。おそらく人件費と家賃分の6カ月分くらいは必要でしょう。最低2000万円はみておかないと。しかしこれがなかなか最初は理解できないですよね。
わたしは最近また銀行借入を増やしたのですが、なかなかたいへんです。
T先生それで思うのは、開業資金を借りたらそれでベンツを買っちゃう人が多いんですよ。開業と同時に新型のBMWに乗ってる人。これ、まちがってます。ベンツを買わずに運転資金に回すべきです。車はクリニックが離陸してから買えばいいんです。開業医なんてほんらい地味なもんですよ。
開業とは、経営者になることと見つけたり
N先生そんなに儲かりませんよね、今。
それから看護師さんなんですけど、わたしの場合は開業するときに、以前国立病院で働いていたときに仲のよかったおばさんに来てもらったんです。もともと人間関係が合うということと、あとわたしは「君臨すれども統治せず」なんです。
K先生どういうことですか?
N先生事務のことは事務さんに、看護のことは看護師さんに任せています。わたしはあまり口出ししません。でも拒否権は持っています。
「ああしろ、こうしろ」とは言いませんが、「それは嫌だ」と言えるということです。拒否権を失ったらおしまいですが、「ああしろ、こうしろ」と口を出すとまたおかしくなってきちゃうんですよ。だから命令はしません。でも拒否はします。これがわたしの「君臨すれども統治せず」です。これでうまく回ってますよ(笑)。
T先生ウチの場合は、やっぱり知り合いに頼んで人を集めていたのですが、最初の1カ月で看護師さんが全員辞めてしまいました。そのころ患者さまが一気に80人/日くらいに増えまして、しかたがないので親戚に2日間応援を頼んで、なんとかしのぎました(涙目)。
この最初の大きなつまずきはとても勉強になったと思います。その後看護師さんをすべて派遣にしました。コストがかかりますが、とてもうまくいっています。
N先生急に患者さまが増えると、対応するのはたいへんですよね。
K先生派遣は高くつきませんか。それにあまり働かないんじゃないですか?
T先生とんでもない。派遣のみなさんは、病院に2-3年勤めた経験があるので基礎的な教育は終わっていて、挨拶語をきちんとできますし、わたしはそういう人材を選んでいます。うちは場所が都心にあって土曜日曜が休みなので、来てくれますよ。それとわたしが看護師さんを雇っているわけじゃなくて派遣会社を雇っていることになるので、爪の長い看護師さんがいたら派遣会社のほうに文句をいって注意してもらいます(笑)。
それからウチは、応援のドクターをMRTさんに頼んでいます。
K先生なるほど。人件費はみんな頭の痛いところですが、人件費を抑える決め手は、若い看護師さんを雇うことにつきると思います。高齢になるほど給料は高くて文句をいうし、動かなくなりますから。しかし若い人はなかなか見つからない……。
T先生それから、「いい事務長」というのが、まったくいないんですよね。奥さんに頼むしかないか。
N先生院長が兼任するしかないですね。でも、だからこそ2軒目の開業がむずかしいということなんです。
K先生この辺、昔とは違ってきてますよね。
N先生あと、病院を回るMRとクリニックを回るMRが、こんなに違うとは思いませんでした。病院に来るMRはちゃんと薬の情報をくれるのに、ウチに来るのはただの営業マンですから(笑)。
それから医療機器に不具合が出たときは、医療機器メーカーに不満をいっても相手にしてもらえませんが、医療機器卸にいうとちゃんと動いてもらえますね。
T先生ウチには医療機器メーカー出身の看護師がいますよ。
それから薬屋さんが持ってくる不動産物件は、自分たちのやっている薬局の近くの物件か、自分たちがまだカバーしていない地域ですよね。そうすると新規開業は空白地域しか勧められませんから、自然と駅から遠いところになってしまいます。彼らに都合のいい場所を指定するわけで、儲かる地域かどうかはわかりません。ただし開業支援はすべてやってくれますから楽ではありますよ。
だけどそれでは、マネジメントの勉強にはならないですよね。開業って結局、経営者になることですから。
N先生それからね、「開業医は厚生労働省の言う通りやっていればいい」という考え方もあります。厚労省に立ち向かってもしかたがないんですよ(笑)。流れには乗ればいいんです。CHANGE OR DIE. 「自分が変わるか死ぬか」です。われわれ開業医は小回りができないと。
厚労省もわれわれをつぶすつもりはないでしょう。2025年までに医療給付費は45兆円に伸ばすと言っています。自己負担も含めれば医療費は70兆円以上になるでしょう。つまり「人口比にすれば今のアメリカくらいの医療費は払う」と言ってるわけです。いま騒がれているようにそんなに医療費を抑制するつもりはないでしょう。だからコンサルのいうことを聞くよりは、厚生労働省のいうことを聞けということです。
T先生でも厚生労働省も言うことが途中で変わったりしますからね。われわれにはとにかく、はしっこさが必要です。
それと重要なポイントとして、医療過誤のリスクをどう減らすかという問題があります。
外科系の場合、開業医は自分の実力が10であれば、処置でも、小手術でも6ぐらいのレベルまでしかしないのが適当ではないでしょうか。10の実力いっぱいの治療行為をやると、医療過誤を起こすリスクが高いと思います。忙しいときに、これはという患者が来ると、ミスしたら終わりですから、大病院に回すしかないと思うんです。ちょっと恥ずかしいですけど、しかたのないことだと思います。
K先生悩むところです。例えば介護保険限度枠いっぱいの患者さまがいて、病院に連れていくにはケアマネージャーを頼まなければならない。しかし違う薬を使えば改善するかもしれないというとき、「リスクはあるけど、自分の実力以上のことをしてあげたほうがよいのでは」という葛藤もあったりします。入院病棟と開業では違いますし。
T先生30代前半で開業する先生は、まだ6くらいの実力しかないかもしれません。そうすると恐いですね。やっぱり実力を10まで引き上げてから開業しないと。これ、内科は違うと思いますけど。
N先生ええ、病院で研修していても症状の出た患者さましか来ませんから。でも内科医が診るのは症状が出る前の患者さまです。いってみれば、病院に来るのはフォークボールが打者の手前ですっと落ちて、ミットに収まる前の段階なんです。それに対して内科の開業医に来るのはまだピッチャーの手を離れる前の段階のボールで、カーブかストレートかわからないところでの判断を求められます。だから開業してから、症状の出る前の患者さまをたくさん診てスキルが上がっていくわけです。ですけどやはり、開業医は安全第一ですね(笑)。
MRTたいへん実践的なお話でした。診療科によって一概にはいえないし、地域特性によっても異なるとは思いますが、開業を考えるドクターのご参考にしていただければ幸いです。
座談会番外編 医師不足……開業医のつぶやき
K先生開業医として最近の医師不足で一番困るのは、救急患者がいても病院が受け入れてくれないことです。
しかたがないので、自分で知っている病院に片っ端から電話して、それでもだめなら救急ネットワークに頼んで、最終的にはかなり離れた場所の病院に受け容れてもらうという感じです。
あるいは僕らも救急車を頼むのですが、救急車の人もわかっていますから、「先生、自分たちで何とか探してください」と言われちゃうんです。これ、日常茶飯事なんですよ。東京にこれだけ大学病院や大病院があっても、われわれの健康はぜんぜん保証されていないのが現実です。
T先生まったくですねえ。
K先生この間たまたまクリニックの野球大会があったのですが、メンバーの一人が転んで骨折しちゃったんです。大学病院は目と鼻の先にあるのに受け入れてもらえません。病院側も訴訟が怖いから、「いま整形外科の先生がいません」なんていわれて断られてしまいます。あちこちに電話してやっと受入先を見つけましたが、夕方の5時に倒れてから、7時まで病院に受け入れてもらえませんでした。
N先生医師不足の原因のひとつとして、患者さまがうるさくなったということはあるでしょうね。最近の患者さまはお客さま気分で、家族への説明も含めると時間が倍かかります。昔の人は、「あまり国に迷惑をかけてはならない」というお互いさま意識があったと思うのですが、いまは医療費はそのままで、医者も看護師も少ないのに、アメリカ並みの医療(?)と勘違いして、高級ホテル並みのサービスを望まれている状態ですから。日本全体のモラル低下が一番の原因のような気がします。
K先生セカンドオピニオンというのも、医者が信用されていないということだし。それによって診療報酬が倍かかりますし。
T先生それから地方も深刻ですね。弱小大学の医局は崩壊の危機にさらされていますから、そこから医者が派遣されている地方病院は医者が引き揚げられて、成り立たなくなっています。
K先生だからますます、救急の患者を受け入れられないですよ。午前中だとまだましなのですが、午後は厳しいですね。
大学病院も無理してやっていることがわかっていますから、開業医としても無理に「受け入れてくれ」とはいいにくい状況です。個人的によく知っているところだと頼みたいのですが、
N先生これはどうにもならないですよ……。
先生方のプライバシー保護のため匿名とし、属性についても内容に影響しない範囲で変えてあります。



